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第9回
霜月
「仏像オークション」 石塚 茂樹
2009.11.27神楽坂「Shun」
石塚 茂樹氏

2008年3月、ニューヨーク・クリスティーズにおいて、運慶作とみられる「大日如来像」がオークションにかけられました。そこに顧客代理として参加した、三越美術部の石塚茂樹氏にお話を伺いました。

鎌倉時代初期の仏師・運慶の作とみられる「大日如来像」が2008年3月、クリスティーズがニューヨークで開いたオークションで、1,437万7,000ドル(約14億円、手数料込み)で、百貨店・三越によって落札されたことは、日本でも大きな話題となりました。クリスティーズによると、海外で落札された日本美術品としては最高額。
この像は高さ66.1センチの檜製で、個人が所有。輸出できない重要文化財に指定されていなかったため、国外のコレクターらが落札した場合、海外に流出する可能性が高いとして、流出回避策を求める文科相あての署名運動も起きていました。三越美術部の石塚茂樹氏は、日本の顧客を代行してオークションを行ないました。

会食の様子

〈石塚 茂樹氏のお話〉

──運慶作大日如来像」落札秘話──

多くのメディアの話題をさらった今回のオークションですが、持主は美術商ではなく、40代のサラリーマンと伺っています。三越が一般客からの依頼でオークションの代行を行なうというのは異例のことですが、30年以上のお取引があるため、お引受させて頂きました。
オークションに至るまでにも秘話がありまして、5年程前、国立博物館の学芸員に仏像の写真を送ったところ、国が3~4億で購入するという話になったそうですが、持主に指南役がいたらしく、国からの話を断り、オークションに踏み切ったのです。

──白熱のオークション──

このニュースが新聞で報道された日、真如苑の幹部の方より、三越でこの「大日如来像」の落札をしてもらえないかとの依頼がありました。仏像は海外のコレクターも多く、今回もキャンベルスープのオーナーをはじめ何名か候補がいたのですが、最終的にはオラクルの社長(推測ですが)との競い合いとなりました。
オークションにあたり、予算をオーバーした際の判断を速やかに下すために、お客様の関係者も同席していただきました。今回のオークションでは日本人は表に立たない方がいいという判断から、フランス人の女性に手を挙げてもらうなど、細心の注意を払って臨みました。

いよいよオークションがスタート。1.5億からスタートし、大方の予想では7~8億といわれていました。オークションは10ミリオンを超えると、5,000万刻みで上がっていきます。その日の相場は前日より円高で1ドル98円。12億円までは予算内と見ていましたが、予想を上回る高額での競り合いになりました。予算額をオーバーしても、わずか20~30秒の間に判断をしなければなりません。途中から「上げ幅を半分にして」というサインを出しましたが、まさに神経戦です。
そして、12,800,000ドルで私たちが落札。白熱したオークションは幕を閉じたのです。オークション終了後、ただちに落札者として三越の名前を報道機関に発表しました。ちょうど1年後の本年、3月20日、この作品は国の重要文化財として指定されることになりました。

大日如来像

運慶工房作「大日如来像」

…ところで、14億で落札されたこの「大日如来像」の持主である、くだんのサラリーマンは、もともといくらで購入したか、皆さんきっと関心がおありでしょう。実は群馬の骨董店で、80万円で購入したそうです。
私は昭和44年に三越に入社し、4年間NYに滞在していたこともあり、今回のオークションに関わることになったのですが、本当に生涯忘れられない経験となりました。

集合写真

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